耐病性の遺伝子ウイルス性の病気ではなく細菌性の病気の場合は、細菌が植物の体内で作りだす毒素を消すための酵素を作る遺伝子が必要になることがある。
たとえばタバコ野火病菌はタプトキシンという毒素を作るが、同時に、この毒素の活性をなくすアセチル化酵素も作る。
そこで、アセチル化酵素を作る遺伝子をタバコに入れて、細菌にたいする抵抗性を獲得した。
最大のテーマ、光合成効率の改善遺伝子の研究開発でノーベル平和賞を受賞というと、医学生理学賞か化学賞の間違いではないかと思うだろうが、けっして間違いでも誤植でもない。
平和賞を受賞した例があるのである。
1970年度のノーベル平和賞には、アメリカの農学者Nが、多収品種のコムギ(小麦)を育成して「発展途上国の食糧問題に寄与した」との理由で選ばれている。
しかも興味深いことには、発端をつくったコムギ遺伝子は日本のコムギ農林加号がもっていたもので、これが海を渡ってアメリカに伝わっている。
農業や品種改良の世界では歴史的なエピソードであまた、ササゲの種子のなかには、タンパク質を分解する酵素トリプシンの働きを阻害するトリプシンインヒビターという物質がある。
この遺伝子を使って、オオタバコガという害虫に強いタバコが作られている。
耐虫性の遺伝子ある種の細菌は胞子を作るときに、殺虫性のタンパク質を作る。
おもしろいことに、このタンパク質を直接、昆虫の体液のなかに入れても毒性を発揮しないのだが、細菌が食べられて消化液によって分解すると、タンパク質が殺虫性を示すようになる。
そこで、トキシンと呼ばれるこのタンパク質の遺伝子を導入してやることで、虫の害に強い植物に変えられると考えられる。
ワタなどのような、食用ではない植物における耐虫性品種の開発に向いていコムギ農林加号が東北地方向けに開発されたのは1935年で、背丈が低く倒れにくいために、条件の悪い土地でも収穫を上げやすい特徴があった。
これに注目したのが、第2次大戦後に日本にやってきた駐留軍で、アメリカへ持ち帰ってアメリカ・コムギとのあいだで交配を行って品種改良を重ねた。
この品種がさらにアメリカやメキシコの国際トウモロコシ・コムギ改良センターに伝わり、育成された品種がメキシコやパキスタンのコムギ収量を2倍近くにまで引き上げるという実績を示した。
この″緑の革命″の中心となった研究者がボーローグで、食糧増産という平和事業に寄与したことからノーベル平和賞が授けられたわけである。
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